「ダンケルク」(1) ノーラン監督の「ダンケルク」と旧作「ダンケルク」

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スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」以来の戦場の臨場感・緊張感,銃弾が空気を切る音。

私は通常上映で見ましたが,IMAXだとさらに臨場感は高まったのだろうと思います。

この映画「ダンケルク」は,3つの地上と海上と空で展開される話を交差させて,第二次世界大戦中の1940年にドイツ軍に包囲されたイギリス・フランス軍中心の40万人近い兵士をイギリスへ脱出させた作戦を描いています。

 
http://wwws.warnerbros.co.jp/dunkirk/

 
私はこの映画のテレビCMを見て,1964年のジャン・ポール・ベルモンド主演の同名の映画「ダンケルク」を思い出しました。

原題は“WEEK-END a ZUYDCOOTE(ズイドコートの週末)”。ズイドコートはダンケルク近くの海岸の名です。

クリストファー・ノーラン監督は,この「ダンケルク」に影響を与えた映画として,「西部戦線異状なし」「アルジェの戦い」や,戦争映画ではない「エイリアン」「スピード」など,11本を挙げてロンドンで上映したそうです。

その11本にはこの旧作「ダンケルク」は含まれていません。私が読んだ限りでは,監督はこの作品について言及していないようです。

旧作「ダンケルク」の公開当時のパンフレットには,淀川長治の長文の解説が載っており,映画の最初の方で,主人公のベルモンドがドイツ軍が撒いたビラが降ってくるのを拾って読むシーンが出てくるというのです。

今回の「ダンケルク」も冒頭に同様のシーンがありました。これは一種のオマージュなのかもしれません。

11本には含めていませんが,監督はやはり「プライベート・ライアン」を再び見たそうです。そしてすごい映画だとしながら,今回はそれとは違う方向性で描いたと言っています。

「プライベート・ライアン」では,ライアン二等兵を探すべく,戦場を駆け巡る一人一人の個性を描きます。

しかしこの「ダンケルク」では,どの人物も同じように描かれます。浜辺で助けを待つ主人公は,時に他の兵士と見分けがつかなくなります。

唯一,小船でダンケルクに向かう老船長の人物像は浮き上がりますが,彼とて助けた兵士に息子を殺されても怒るわけでも泣き叫ぶわけでもなく,船の操舵を続けます。

戦争映画につきものの,血や残酷なシーンもほとんどありません。

女性は,救護や看護のための女性がわずかに登場するだけです。

旧作「ダンケルク」ではベルモンドはフランス兵に襲われそうになった女性を助け,恋に落ちます。真珠湾攻撃を描いた「パール・ハーバー」は,戦争が恋愛物語の舞台装置と化していました。

今回の「ダンケルク」では,会話は最小限に抑えられており,全部書き出しても紙1枚に収まるくらいです。

これらのことによって,観客は登場人物には感情移入できません。

監督は戦争の中の人物を描こうとしたのではなく,戦争という事態を描こうとしたのでしょう。

その結果,この映画は非常によくできた戦場体験のアトラクションとなっています。

3つの物語がそれぞれ時間の流れが違うことは,画面に「防波堤:1週間」,「海:1日」,「空:1時間」と明示してくれます。

さらに象徴的なのが全編音楽が流れていることです。緊張感を高める効果をあげています。しかし,現実の戦場には音楽は決して流れていません。

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「カサノバ」(2) ヴェネツィアの歴史

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この映画は,18世紀のヴェネツィアを舞台としています。

ヴェネツィアは,アドリア海の奥に位置するヴェネツィア湾のラグーナと呼ばれる潟に,無数の丸太の杭を打ち込んで建設された人口都市です。

5世紀にゲルマン人の侵入から逃れた北イタリアの住民が建設を開始しました。

当初アドリア海を支配していたビザンツ(東ローマ)帝国の支配下で,ヴェネツィアは事実上の自治権を持っていました。

7世紀末には初代の総督(ドージェ)を選出し,ヴェネツイア共和国の歴史が始まります。

11世紀にはビザンツ帝国からアドリア海の海上防衛を任され,ビザンツ帝国内での貿易特権を得ます。

そして11世紀末にクレルモン宗教会議で教皇ウルバヌス2世が提唱して十字軍が開始されると,これを利用して東方(レヴァント)貿易を拡大して繁栄しました。

13世紀初めの第4回十字軍に際しては,十字軍をビザンツ帝国の都コンスタンティノープル攻撃に誘導し,十字軍はコンスタンティノープルを占領してビザンツ帝国をいったん滅ぼし,ラテン帝国を建設します。

13世紀から14世紀にはライバルの都市ジェノヴァとの戦いではヴェネツィアは有利な立場を維持しました。

しかし,1453年にビザンツ帝国がオスマン帝国に滅ぼされて地中海にオスマン帝国が進出し,さらにいわゆる大航海時代となって,地中海から大西洋や太平洋に貿易の中心が移り,商業革命が起こり,ヴェネツィアはゆっくりと衰退していくことになります。

それでも1538年のプレヴェザの海戦や1571年のレパントの海戦では,スペインなどとともに艦隊を出してオスマン帝国と戦っています。

17世紀末のカルロヴィッツ条約は,オスマン帝国が衰退に向かう転機となる条約ですが,結んだ相手はオーストリア・ポーランド,そしてヴェネツィアです。

時代は少し戻りますが,15世紀から16世紀にかけては神聖ローマ皇帝フランス王がイタリアを舞台としてイタリア戦争を戦い,都市が衰退してイタリア・ルネサンスも衰退しますが,ヴェネツィアは海上にあるため,戦争の影響を受けず,ヴェネツィア派と呼ばれる画家たち,ティツィアーノティントレットヴェロネーゼが活躍し,イタリア・ルネサンス最後の輝きを放ちました。

また,17世紀頃からイギリスの富裕な貴族の子息たちは学業を終えると,グランド・ツアーと呼ばれる一種の修学旅行で大陸に渡り,フランスからイタリアをめざしました。その旅はお供をつれて数年にわたるもので,目的地としてヴェネツィアは人気がありました。

1797年にナポレオン・ボナパルトに侵略されて,ついにヴェネツィア共和国は崩壊しました。

このヴェネツィア共和国最後の18世紀に生きたのがカサノバだったのです。

ヴェネツィアは,独立を失ってから,観光で繁栄してきました。いわば200年の筋金入りの観光都市です。

近年,ヴェネツィアは地盤沈下と地球温暖化の影響などで,毎年秋から冬にかけてたびたび潮位が上がり,水につかります。

これをアクア・アルタといい,潮位の高さによって4種類の警報がけたたましく鳴るそうです。住民にとってはやっかいな話なのですが,観光客は大はしゃぎです。

ところで,このアクア・アルタ対策に日本企業が防潮ゲートを作るプロジェクトが進められています。その名は,紅海を真っ二つに割った旧約聖書のエピソードにちなんでモーゼ・プロジェクトと名付けられました。

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「カサノバ」(1) 18世紀ヨーロッパ,啓蒙専制君主,ヒース・レジャー

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プレイボーイの代名詞ともされるカサノバは,実在の人物で,18世紀前半にヴェネツィアに生まれ,幼い時からさまざまな才能を発揮するとともに,多くの女性とも関係をもちました。

一時は宗教裁判で異端とされて投獄されましたが脱獄に成功し,その後,ヨーロッパ各地の宮廷を遍歴しています。

フランスの啓蒙思想家ヴォルテールや啓蒙専制君主のプロイセンのフリードリヒ2世やロシアのエカチェリーナ2世,フランスのルイ15世の愛人で一時王に代わって政治を行ったポンパドゥール夫人などと交流をもっています。

七年戦争中は,和平交渉にポルトガル代表として参加したこともあるそうです。

しかし,行く先ごとに女性をめぐるトラブルを起こし,最後は現在のチェコで貴族の司書となりました。

すでに老人となったカサノバは,孤独な生活の中で自らの女性との経験を大著の回想録「我が生涯の物語」にまとめました。邦訳は文庫本で12冊もあります。

このようなカサノバの物語は恰好の映画の題材として,映画化がくり返されました。1976年にはイタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニが映画化しています。美男の代表のようなアラン・ドロンがカサノバを演じたこともあります。

当然,エロティックな映画になることが多いのですが,今回の「カサノバ」は,ほとんどそのようなシーンはなく,ロマンティックなコメディになっています。

修道女との情事で教会に捕らえられたカサノバは,ヴェネツィア総督のおかげで釈放されます。総督から落ち着くために結婚することを強制され,ある若い女性と婚約しました。

しかし,その女性に思いを寄せる青年から決闘を申し込まれ,決闘に現れたのは彼の姉フランチェスカでした。彼女は男の変名で女性の権利のための異端の書を出版していました。

フランチェスカに恋したカサノバは,彼女に母親の決めた商人の婚約者がいることを知ると,彼女がその顔を知らないことを利用して婚約者になりすまします。

カーニバルの夜,カサノバの婚約者と鉢合わせしても何とか切り抜けたのですが,彼がカサノバであることがばれてしまいます。

教会から派遣された異端審問官に捕らえられたカサノバは,フランチェスカを救おうと自分が変名で本を出していたと自白します。

しかし,弁護人に化けたフランチェスカが真相を告げ,2人は異端として処刑されることになります。

ロープが2人の首にかけられ,処刑が執行される直前,カサノバの母とその愛人が枢機卿に化けて現れ,彼らを救いだします。

フランチェスカの弟は思いを寄せていたカサノバの婚約者を得て,自分がカサノバの名を継ぐと申し出て,カサノバたちを逃がすのです。

その後,カサノバたちは旅芸人として暮らし,やがてカサノバの名を継いだ青年は年老いて,自伝を書き始めるのでした。

カサノバを演ずるヒース・レジャーは,「ブロークバック・マウンテン」でアカデミー主演男優賞にノミネートされて注目を浴びました,

しかし,2008年に28歳で急死し,死後「ダークナイト」でのバットマンの敵ジョーカー役でアカデミー助演男優賞を受賞しました。

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「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」(2) ヒエログリフ・フェニキア文字,「ジキルとハイド」,ダーク・ユニバースの住人たち

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ミイラ映画といえば,体から包帯のような布をたらして,人々を襲うミイラの姿を思い浮かべるかもしれませんが,最初の作品「ミイラ再生」には,最初こそミイラが登場しますが,復活したあとはミイラの姿をしているわけではありませんでした。そのようなイメージは1950年代以降のリメイク作品で定着したものです。

さて,「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」では,ミイラは女性で,体にはお約束の布をまとっているものの,体にはエジプト文字らしきものが書かれています。

ただ,ヒエログリフ(神聖文字)ではないようで,正確に判断する知識はありませんが,顔に書かれている文字などはむしろフェニキア文字のように見えます。

ロンドンの地下鉄工事現場で十字軍時代の地下墓地が見つかります。

一方,中東の砂漠地帯で古代の宝を探していた主人公が,アメリカ軍が攻撃したある村で古代エジプトの墓を見つけました。柩は,石像に囲まれ,水銀の満たされた池に鎖でつり下げられていました。

彼に地図を盗まれた女性考古学者が現れ,水銀の池から柩を取り出し,イギリスに運ぼうとしますが,途中で輸送機が無数のカラスに襲われます。

主人公は女性考古学者を救い,自らは輸送機とともに墜落しますが,柩のミイラから特殊な能力を与えられおり,無傷で生き返ります。

柩に眠っていたミイラは,古代エジプトの王女で,権力を得ようと父のファラオと幼い弟を殺し,そのため5000年の昔,生きながらミイラにされたのでした。水銀の池は彼女を封じ込めるためのものだったのです。

ミイラの王女は,柩から出て人々を襲ってエネルギーを吸い取り,徐々に復活していきます。そして,十字軍兵士が持ち去った宝石を,もとの短剣にはめて死の神セト復活の儀式行おうとするのですが,突然現れた謎の集団に捕らえられます。

彼らは,悪を破壊するための秘密組織プロディジウムのメンバーでした。

ミイラの王女はロンドンの自然史博物館の地下にある組織の研究所に拘束されますが,脱出して,短剣の宝石を地下鉄現場の十字軍兵士の墓から取り戻し,儀式を行おうとします。

しかし,女性考古学者を失った主人公がミイラの王女と戦ってこれを阻止します。女性考古学者を生き返らせた主人公は,再び砂漠に戻り,新たな旅に出発します。

ラッセル・クロウの役は,秘密組織プロディジウムのボスであるハイド博士です。彼は薬物を注射することで,自らの邪悪な性格が表れることを防いでおり,明らかに「ジキルとハイド」です。

「ミイラ再生」と同様,1931年に「ジキル博士とハイド氏」として映画化され,主演のフレドリック・マーチはアカデミー賞主演男優賞を獲得しています。ただし,この映画はユニバーサルではありません。

このラッセル・クロウのハイド博士を中心として,ダーク・ユニバースの世界は展開するのでしょう。

トム・クルーズはミイラの王女から特殊な能力を与えられており,ミイラ男としてのキャラクターを演じる計画のようです。

さらに,「ノーカントリー」でアカデミー賞主演男優賞を獲得したハビエル・バルデムがフランケンシュタインを,ジョニー・デップが透明人間を演ずる計画があるそうです。ほかにも半魚人や狼男というようなキャラクターもあります。

ユニバーサル・スタジオにも,当然ダーク・ユニバースというアトラクションが生まれるのでしょうね。

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「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」(1) 映画の歴史,ミイラ映画の歴史

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ユニバーサルが,マーベル・シネマテック・ユニバースというシリーズで一つの世界をつくって,アイアンマンやキャプテン・アメリカなどの映画を発表しているように,ミイラやフランケンシュタインや狼男などの古典的キャラクターを,ダーク・ユニバースというシリーズで展開しようとする第一作です。

会社として本気なのは,トム・クルーズとラッセル・クロウを,この「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」であえて共演させたということでも分かります。

http://themummy.jp/
いわゆるミイラ映画は,1932年に「ミイラ再生」から6作,1950年代から70年代にリメイクされて4作,さらに1999年の「ハムナプトラ 失われた砂漠の都」からシリーズとして3作公開されています。

1894年にフランスのリヨンでリュミエール兄弟が撮影した46秒の「工場の出口」というフィルムが翌年パリで公開されて,映画の歴史が始まりました。

ただし,それ以前に箱の中をのぞきこむ形の映画は,1891年にエジソンによって発明されています。

当初アメリカの映画産業の中心は,東海岸のニューヨークだったのですが,そこは白人プロテスタントWASPに支配されており,自由な映画製作を求めて,映画製作者たちは西海岸に移りました。

当時のフィルムは感度が低く,晴れた日が多い西海岸の方が撮影に適していたという事情もありました。

1920年代にはそれまでの無声映画に代わって音声をともなったトーキーが,さらに1930年代にはカラー映画が登場します。

1929年に世界恐慌が起こると,アメリカの映画産業でも独占化が進む一方,安い値段で楽しめる娯楽として,映画は大衆的人気を得ました。

1929年にはアカデミー賞も始まりました。

ユニバーサルの創業者カール・レムリーから,1928年に21歳の誕生日にユニバーサルピクチャースの社長の地位をプレゼントされたカール・レムリー・ジュニアは,劇場網を整備し,トーキー用にスタジオをつくり変えてモンスター映画を製作することにしました。

1931年にドラキュラとフランケンシュタインの映画を成功させたあと,フランケンシュタインを演じたボリス・カーロフを起用して,翌年「ミイラ再生」を製作したのです。

1922年にハワード・カーターらがツタンカーメンの墓の発掘に成功して話題になっていましたから,そこからアイデアを得たと思われます。

映画の主人公イムホテプは,エジプト古王国第3王朝のジョゼル王に仕えた実在の人物で,サッカラに残る階段ピラミッドの設計者として知られています。

ちなみにオウム真理教の開祖麻原彰晃は,前世はイムホテプだそうです。

この「ミイラ再生」,1950年代にリメイクされた「ミイラの幽霊」,そして「ハムナプトラ 失われた砂漠の都」や今回の「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」は,いずれも原題はThe Mummyです。

日本では「マミー」といえばお母さんを意味するmammyから優しいイメージで,カバヤのビスケットの製品名にあったし,森永の飲料にも使われているので,今回の作品まで使うのを避けていたのでしょう。

今回の作品にも,「マミー」の前にあえて「ザ」がつけてありますね。

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今月見た映画(2017年7月)

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○はブログで取り上げた作品。●は取り上げなかった作品です。

●「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」 2016
U-NEXTで見ました。
1996年公開の「インデペンデンス・デイ」の続編で,20年後の設定になっていますから,公開された2016年の話です。インデペンデンス・デイとは,もちろんアメリカの独立宣言の発表された7月4日のことです。私も7月4日に見ました。前作同様,巨大な宇宙船で異星人が攻めてきて,多くの犠牲者を出しながら結局撃退するというストーリーです。共通の敵を持ったとき,集団は団結するという,アレです。映画を見終わったら,北朝鮮がICBM実験を行ったとニュースでやっていました。やはり,異星人の攻撃でも受けない限り,こういうことがくり返されるようです。

○「紀元前1万年」 2008
DVDで見ました。
http://storiamondiale.sakura.ne.jp/uno/2017/07/08/
http://storiamondiale.sakura.ne.jp/uno/2017/07/10/

●「バットマン対スーパーマン ジャスティスの誕生」 2016
Netflexで見ました。
バットマンとスーパーマンが対決するって,相当無理があるなと思って見ていませんでした。やっぱり,もともと無理があるので話をことさらにややっこしくしているのですが,結局,バットマンがスーパーマンを倒そうとするのは,自分の会社のビルがスーパーマンと悪との戦いに巻きこまれて壊され,社員が犠牲になったため。あまり説得力がないように思えました。一方,スーパーマンがバットマンと戦う理由は,母親を人質に取られて脅かされたためという,結構ありがちな理由です。スーパーマンは怪物を倒しますが,自らも殺されて埋葬されます。あれ,復活しないの,と思っていたら,エンディングの最後で柩の上にかけられた土が浮かび上がるのが,0.3秒くらい見えます。

●「ロスト・ワールド/ジェラシック・パーク」 1997
U-NEXTで見ました。
「紀元前1万年」で恐竜の話を書いた関係で見たのですが,なぜか第1作の「ジュラシック・パーク」ではなく続編の方を先に見てしまいました。第1作は,公開時も見ていません。この2作目は,ハラハラするシーンも崖から落ちそうになるトレーラーから脱出するところだったり,なんか恐竜がメインになっていないような印象を受けました。ところで,この映画にも出てくるティラノサウルス・レックスは一時,体中に毛が生えていたといわれて,再現したCGも見たことがありますが,鱗に覆われていたという説が出たみたいですね。なにせ約6500万年前に死滅していますから。その時間で,人類が猿人から現代人になるのを13回繰り返せます。

○「レッズ」1981
DVDで見ました。
http://storiamondiale.sakura.ne.jp/uno/2017/07/18/
http://storiamondiale.sakura.ne.jp/uno/2017/07/21/

●「恋愛適齢期」
Amazonプライムビデオで見ました。
「レッズ」に出ていたジャック・ニコルソンつながりで見ました。独身で30歳以下のの女性としかつきあわない男と,その彼女の母親で脚本家の女性が恋をするラブ・コメディです。描きようによっては危ない話になりそうなのを,おしゃれな話にしてあります。男は10ほどの会社を経営し,女は脚本家,生活には何の不安もない。男は心臓発作で倒れるけど,すぐに回復し,恋の胸の痛みを発作と間違えて救急車で運び込まれる始末。冷静に考えれば,のんきな映画です。しかし,やはりジャック・ニコルソン,そしてダイアン・キートンで見せます。ダイアン・キートンは最初登場した時,顔には深くしわが刻まれ,「だれ,この人」と彼女であることに気がつきませんでした。でも,それがだんだん素敵に見えてくるのです。年齢を重ねた女性を可愛いと思ったのは,私は彼女で2人目です。

私の参考書です。CDの声は女性のナレーターです。

聴くだけ世界史(古代~近代へ)    聴くだけ世界史(近現代)

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「レッズ」(2) 第1次ロシア革命・ロシア革命(ロシア二月革命・ロシア十月革命)

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この映画もアメリカ映画の常で,恋愛映画です。ポスターなどに使われた,リードと妻となったルイーズ・ブライアンが再会して抱き合う写真が象徴的です。

前半はリードと自由恋愛を主張するルイーズ,さらに劇作家のユージン・オニールの三角関係を中心に話が進みます。

私の興味は監督や俳優とは違うところにあることは,すでに書きました。

ただ,この映画でエマ・ゴールドマン役のモーリン・ステイプルトンが助演女優賞を獲得しました。しかし,ユージン・オニール役のジャック・ニコルソンの存在感が際立っているように思います。ジャック・ニコルソンは12回のアカデミー賞ノミネートと3回の受賞歴があります。

途中でインターミッションが入り,その後,リードがルイーズとともにロシアに渡り,ロシア十月革命を体験する場面になります。レーニンが登場し,トロツキーが演説し,リードもソヴィエトで発言する機会を与えられます。

アメリカに帰国後出版した「世界をゆるがした十日間」は,ベストセラーになりました。

リードは社会主義運動に本格的に身を投じ,アメリカ社会党から分離した左派がアメリカ共産党とアメリカ共産労働党を結成すると,アメリカ共産労働党のコミンテルン代表の承認を取り付けるため,再びモスクワに向かいます。

コミンテルン議長のジノヴィエフは,共産労働党のアメリカ代表を認めず,共産党と共産労働党の協力を求めます。

リードは帰国を試みますが果たせず,中東への宣伝活動に参加するのですが,リードを追ってきたルイーズとの再会は果たしたものの,チフスにかかって亡くなりました。33歳になる3日前でした。彼はモスクワのクレムリンの壁に葬られています。

ところで,ロシア革命には,1905年の第1次ロシア革命と1917年のロシア革命があります。第2次ロシア革命というのはありません。

また,ロシア革命は,ロシア二月革命ロシア十月革命の2段階です。

当時のロシアはユリウス暦を使っていたためグレゴリウス暦とは13日ずれていて,ユリウス暦2月23日に起こったロシア二月革命は,グレゴリウスでは三月革命となり,10月25日に起こったロシア十月革命は,十一月革命となります。

第1次ロシア革命は1905年,日露戦争中に起こりました。

首都ペテルブルクで平和誓願のデモ隊に軍が発砲した血の日曜日事件を契機として勃発しましたが,皇帝ニコライ2世十月宣言憲法制定国会開設を約束すると沈静化しました。

しかし,1914年に第一次世界大戦が始まると再び革命運動が高まり,1917年にロシア革命が起こりました。

起こったのは首都ペテログラードにおいてです。ドイツ語読みのペテルブルクを,第一次世界大戦でドイツと戦うことになったため,ロシア風にペトログラードと変えたのです。

ロシア二月革命では,ニコライ2世が退位してロマノフ朝が倒れました。

その後,社会革命党右派のケレンスキーを中心とする臨時政府をレーニンらボリシェヴィキが倒したのが,リードたちが目撃したロシア十月革命です。

映画は,実際にリードと親交のあった人々のインタビュー映像を挟み込んでリアリティを出しています。彼らは1980年の映画製作時点では存命だった人々で,貴重な記録になっています。しかし,それぞれの人物の名前は示されていません。そのなかには高名な文学者のヘンリー・ミラーも含まれます。彼は1980年6月に亡くなっています。

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「レッズ」 (1) 冷戦・デタント・第2次冷戦

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「レッズ」は,ロシア十月革命の優れたルポルタージュ「世界をゆるがした十日間」を著したジョン・リードの半生を描いた,1981年の作品です。

彼の「世界をゆるがした十日間」は,センター試験で問題文として引用されたこともあります。

レッズとは共産主義者のことです。日本でも差別的なニュアンスの「アカ」という言葉がありますね。

これらは共産主義あるいは社会主義の象徴が赤旗であることからきています。元々はフランスで戒厳令をを示す旗だったのが,フランス革命中に虐殺事件が起こり,抗議する側が逆の意味で掲げたことに由来するようです。

この映画は,ウォーレン・ベイティが製作・監督・脚本・主演を兼ね,アカデミー賞に12部門でノミネートされ,監督賞・撮影賞・助演女優賞の3部門でオスカーを獲得しました。

しかし,反共のアメリカで,いくらアメリカ人ジャーナリストだとしても,共産主義者を主人公としてロシア革命を舞台とした映画がハリウッドでよく撮れたものだと思います。

それはこの映画が撮られた時期が大きく影響しています。撮影が行われたのは,1979年から1980年です。

第二次世界大戦後の,アメリカを中心とした資本主義諸国とソ連を中心とした共産主義諸国の東西対立,いわゆる冷戦についてはこのブログでも何回か説明しました。

1955年にはジュネーヴ4巨頭会談が行われ,「雪解け」が進みましたが,1961年にはベルリンの壁が建設され,1962年のキューバ危機では両者の対立は核戦争の危機にまで高まりました。

しかし,1970年代には緊張緩和すなわちデタントが実現していきます。

1971年には,中華民国から中華人民共和国国連代表権が交替し,翌1972年にニクソン大統領は訪中して中華人民共和国を事実上承認しました。

日本は同年,田中角栄首相が訪中して日中共同声明を発表し,国交正常化をアメリカに先駆けて実現しました。

アメリカと中華人民共和国の国交正常化は1979年のカーター大統領時代に実現しています。

また,ソ連は中華人民共和国の国連代表権を後押ししてきたのですが,1956年にフルシチョフ平和共存スターリン批判を発表すると中ソ対立が起こり,1969年には中ソ国境で武力衝突まで発生していました。

1972年の米中接近に対して,同年にソ連のブレジネフはニクソンと第1次戦略兵器制限交渉(SALTⅠ)の条約を締結しました。

1975年にはソ連・アメリカ・ヨーロッパ諸国など35カ国で全欧安全保障会議(CSCE)を開きました。

米中国交正常化と同じ1979年には,ブレジネフはカーターとの間で第2次戦略兵器制限交渉(SALTⅡ)の条約を結んでいます。

しかし,同年,ソ連がアフガニスタンに侵攻すると,アメリカは反発し,翌1980年にモスクワで行われたオリンピックを,アメリカや日本,さらに中華人民共和国などはボイコットしています。

1981年には「強いアメリカ」を掲げるレーガンが大統領となり,第2次冷戦ともいわれる事態になりました。SALTⅡも期限の1985年までにアメリカが批准せず,成立しませんでした。

このようなデタントが頂点を迎え,そして急に再び対立が激しくなる1979年から1980年の時期に,この映画は製作されたのです。

撮影はソ連では行われず,フィンランドやスペインで似たような場所を探して撮っています。

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「紀元前1万年」(2) 人類の誕生,サーベルタイガーとマンモス,ピラミッド

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最初の人類が地球に登場したのは,私が高校生のときに使った世界史の教科書には「少なくとも100万年前」と書いてありました。

しかし,その後研究が進むにつれて古くなり,今は教科書によってバラツキがありますが,アフリカ中部で発見されたサヘラントロプスは700万年前にまでさかのぼります。

わずか,50年ほどで500万年以上も古くなっているのは驚きです。

先史時代文字による記録のない時代で,文字による記録のある時代が歴史時代です。

文字は農耕・牧畜の開始後,都市が生まれ,階級差が生まれて,発明されたと考えられています。この映画では,ピラミッドの場面で設計図らしきものに文字が書かれていたので,厳密に言うとすでに歴史時代に入っていることになります。

主人公の若者のマンモスを狩る狩猟民族は,馬に乗って襲ってくる部族を,「四本足の悪魔」と呼んでいます。

アメリカの古代文明の人々が馬に乗るスペイン人を怪物と恐れたことが,少数のスペイン人に征服された一つの原因だとされています。ただし,それは16世紀前半のことですが。

この映画では黒人の農耕民が登場します。農耕と牧畜は,西アジアで約9000年前に始まったとされています。紀元前1万年はちょっと早いかもしれませんが,まあ許容範囲でしょう。

主人公の若者がサーベルタイガーあるいは剣歯虎の一種スミロドンを助け,そのサーベルタイガーが現れて若者をかばったことから,農耕民の信頼を得ます。

しかし,サーベルタイガーは,10万年前に絶滅していますので,人類と共存したことはあるものの,この時代には存在しません。

ちなみにサーベルタイガーはネコ科ですが,古い時代に分岐したため,ネコ属やヒョウ属とは見かけのようには近い存在ではないそうです。

一方,この映画で人間によってピラミッドの巨石を運ぶために使役されているマンモスは,1万年前くらいまで生存していました。

やはり絶滅したのですが,人間の狩猟の対象になったためという説もあります。しかし,家畜化したというのは無理でしょう。

また,マンモスという語は巨大なものの意味に使われますが,実際には私たちが知っているゾウとそんなに大きさは変わらないようです。

シベリアでは,よく冷凍保存されたマンモスの死骸が発見され,日本でも公開されたことがあります。もし完全なDNAが取り出せれば,マンモスをクローン技術で復活させることができるそうです。

さて,最後にこの映画に登場するピラミッドは,頂上にベンベン石とも呼ばれる金色に輝くキャップストーンがのせられていることから,明らかにエジプトのピラミッドです。

だとすれば,エジプトのピラミッドは,定説よりずっと古い時代に建設されたという立場に基づいているのかもしれませんが,まあ単に映画製作上の演出にすぎないのでしょう。

結局,神とされた支配者は若者に槍で殺されて正体ははっきりせず,一方殺された若者の恋人は,遠く離れた故郷にいる巫女のおかげで生き返るなど,最後はつじつま合わせのようでした。

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