「カサノバ」(1) 18世紀ヨーロッパ,啓蒙専制君主,ヒース・レジャー

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プレイボーイの代名詞ともされるカサノバは,実在の人物で,18世紀前半にヴェネツィアに生まれ,幼い時からさまざまな才能を発揮するとともに,多くの女性とも関係をもちました。

一時は宗教裁判で異端とされて投獄されましたが脱獄に成功し,その後,ヨーロッパ各地の宮廷を遍歴しています。

フランスの啓蒙思想家ヴォルテールや啓蒙専制君主のプロイセンのフリードリヒ2世やロシアのエカチェリーナ2世,フランスのルイ15世の愛人で一時王に代わって政治を行ったポンパドゥール夫人などと交流をもっています。

七年戦争中は,和平交渉にポルトガル代表として参加したこともあるそうです。

しかし,行く先ごとに女性をめぐるトラブルを起こし,最後は現在のチェコで貴族の司書となりました。

すでに老人となったカサノバは,孤独な生活の中で自らの女性との経験を大著の回想録「我が生涯の物語」にまとめました。邦訳は文庫本で12冊もあります。

このようなカサノバの物語は恰好の映画の題材として,映画化がくり返されました。1976年にはイタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニが映画化しています。美男の代表のようなアラン・ドロンがカサノバを演じたこともあります。

当然,エロティックな映画になることが多いのですが,今回の「カサノバ」は,ほとんどそのようなシーンはなく,ロマンティックなコメディになっています。

修道女との情事で教会に捕らえられたカサノバは,ヴェネツィア総督のおかげで釈放されます。総督から落ち着くために結婚することを強制され,ある若い女性と婚約しました。

しかし,その女性に思いを寄せる青年から決闘を申し込まれ,決闘に現れたのは彼の姉フランチェスカでした。彼女は男の変名で女性の権利のための異端の書を出版していました。

フランチェスカに恋したカサノバは,彼女に母親の決めた商人の婚約者がいることを知ると,彼女がその顔を知らないことを利用して婚約者になりすまします。

カーニバルの夜,カサノバの婚約者と鉢合わせしても何とか切り抜けたのですが,彼がカサノバであることがばれてしまいます。

教会から派遣された異端審問官に捕らえられたカサノバは,フランチェスカを救おうと自分が変名で本を出していたと自白します。

しかし,弁護人に化けたフランチェスカが真相を告げ,2人は異端として処刑されることになります。

ロープが2人の首にかけられ,処刑が執行される直前,カサノバの母とその愛人が枢機卿に化けて現れ,彼らを救いだします。

フランチェスカの弟は思いを寄せていたカサノバの婚約者を得て,自分がカサノバの名を継ぐと申し出て,カサノバたちを逃がすのです。

その後,カサノバたちは旅芸人として暮らし,やがてカサノバの名を継いだ青年は年老いて,自伝を書き始めるのでした。

カサノバを演ずるヒース・レジャーは,「ブロークバック・マウンテン」でアカデミー主演男優賞にノミネートされて注目を浴びました,

しかし,2008年に28歳で急死し,死後「ダークナイト」でのバットマンの敵ジョーカー役でアカデミー助演男優賞を受賞しました。

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「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」(2) ヒエログリフ・フェニキア文字,「ジキルとハイド」,ダーク・ユニバースの住人たち

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ミイラ映画といえば,体から包帯のような布をたらして,人々を襲うミイラの姿を思い浮かべるかもしれませんが,最初の作品「ミイラ再生」には,最初こそミイラが登場しますが,復活したあとはミイラの姿をしているわけではありませんでした。そのようなイメージは1950年代以降のリメイク作品で定着したものです。

さて,「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」では,ミイラは女性で,体にはお約束の布をまとっているものの,体にはエジプト文字らしきものが書かれています。

ただ,ヒエログリフ(神聖文字)ではないようで,正確に判断する知識はありませんが,顔に書かれている文字などはむしろフェニキア文字のように見えます。

ロンドンの地下鉄工事現場で十字軍時代の地下墓地が見つかります。

一方,中東の砂漠地帯で古代の宝を探していた主人公が,アメリカ軍が攻撃したある村で古代エジプトの墓を見つけました。柩は,石像に囲まれ,水銀の満たされた池に鎖でつり下げられていました。

彼に地図を盗まれた女性考古学者が現れ,水銀の池から柩を取り出し,イギリスに運ぼうとしますが,途中で輸送機が無数のカラスに襲われます。

主人公は女性考古学者を救い,自らは輸送機とともに墜落しますが,柩のミイラから特殊な能力を与えられおり,無傷で生き返ります。

柩に眠っていたミイラは,古代エジプトの王女で,権力を得ようと父のファラオと幼い弟を殺し,そのため5000年の昔,生きながらミイラにされたのでした。水銀の池は彼女を封じ込めるためのものだったのです。

ミイラの王女は,柩から出て人々を襲ってエネルギーを吸い取り,徐々に復活していきます。そして,十字軍兵士が持ち去った宝石を,もとの短剣にはめて死の神セト復活の儀式行おうとするのですが,突然現れた謎の集団に捕らえられます。

彼らは,悪を破壊するための秘密組織プロディジウムのメンバーでした。

ミイラの王女はロンドンの自然史博物館の地下にある組織の研究所に拘束されますが,脱出して,短剣の宝石を地下鉄現場の十字軍兵士の墓から取り戻し,儀式を行おうとします。

しかし,女性考古学者を失った主人公がミイラの王女と戦ってこれを阻止します。女性考古学者を生き返らせた主人公は,再び砂漠に戻り,新たな旅に出発します。

ラッセル・クロウの役は,秘密組織プロディジウムのボスであるハイド博士です。彼は薬物を注射することで,自らの邪悪な性格が表れることを防いでおり,明らかに「ジキルとハイド」です。

「ミイラ再生」と同様,1931年に「ジキル博士とハイド氏」として映画化され,主演のフレドリック・マーチはアカデミー賞主演男優賞を獲得しています。ただし,この映画はユニバーサルではありません。

このラッセル・クロウのハイド博士を中心として,ダーク・ユニバースの世界は展開するのでしょう。

トム・クルーズはミイラの王女から特殊な能力を与えられており,ミイラ男としてのキャラクターを演じる計画のようです。

さらに,「ノーカントリー」でアカデミー賞主演男優賞を獲得したハビエル・バルデムがフランケンシュタインを,ジョニー・デップが透明人間を演ずる計画があるそうです。ほかにも半魚人や狼男というようなキャラクターもあります。

ユニバーサル・スタジオにも,当然ダーク・ユニバースというアトラクションが生まれるのでしょうね。

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「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」(1) 映画の歴史,ミイラ映画の歴史

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ユニバーサルが,マーベル・シネマテック・ユニバースというシリーズで一つの世界をつくって,アイアンマンやキャプテン・アメリカなどの映画を発表しているように,ミイラやフランケンシュタインや狼男などの古典的キャラクターを,ダーク・ユニバースというシリーズで展開しようとする第一作です。

会社として本気なのは,トム・クルーズとラッセル・クロウを,この「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」であえて共演させたということでも分かります。

http://themummy.jp/
いわゆるミイラ映画は,1932年に「ミイラ再生」から6作,1950年代から70年代にリメイクされて4作,さらに1999年の「ハムナプトラ 失われた砂漠の都」からシリーズとして3作公開されています。

1894年にフランスのリヨンでリュミエール兄弟が撮影した46秒の「工場の出口」というフィルムが翌年パリで公開されて,映画の歴史が始まりました。

ただし,それ以前に箱の中をのぞきこむ形の映画は,1891年にエジソンによって発明されています。

当初アメリカの映画産業の中心は,東海岸のニューヨークだったのですが,そこは白人プロテスタントWASPに支配されており,自由な映画製作を求めて,映画製作者たちは西海岸に移りました。

当時のフィルムは感度が低く,晴れた日が多い西海岸の方が撮影に適していたという事情もありました。

1920年代にはそれまでの無声映画に代わって音声をともなったトーキーが,さらに1930年代にはカラー映画が登場します。

1929年に世界恐慌が起こると,アメリカの映画産業でも独占化が進む一方,安い値段で楽しめる娯楽として,映画は大衆的人気を得ました。

1929年にはアカデミー賞も始まりました。

ユニバーサルの創業者カール・レムリーから,1928年に21歳の誕生日にユニバーサルピクチャースの社長の地位をプレゼントされたカール・レムリー・ジュニアは,劇場網を整備し,トーキー用にスタジオをつくり変えてモンスター映画を製作することにしました。

1931年にドラキュラとフランケンシュタインの映画を成功させたあと,フランケンシュタインを演じたボリス・カーロフを起用して,翌年「ミイラ再生」を製作したのです。

1922年にハワード・カーターらがツタンカーメンの墓の発掘に成功して話題になっていましたから,そこからアイデアを得たと思われます。

映画の主人公イムホテプは,エジプト古王国第3王朝のジョゼル王に仕えた実在の人物で,サッカラに残る階段ピラミッドの設計者として知られています。

ちなみにオウム真理教の開祖麻原彰晃は,前世はイムホテプだそうです。

この「ミイラ再生」,1950年代にリメイクされた「ミイラの幽霊」,そして「ハムナプトラ 失われた砂漠の都」や今回の「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」は,いずれも原題はThe Mummyです。

日本では「マミー」といえばお母さんを意味するmammyから優しいイメージで,カバヤのビスケットの製品名にあったし,森永の飲料にも使われているので,今回の作品まで使うのを避けていたのでしょう。

今回の作品にも,「マミー」の前にあえて「ザ」がつけてありますね。

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