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この映画もアメリカ映画の常で,恋愛映画です。ポスターなどに使われた,リードと妻となったルイーズ・ブライアンが再会して抱き合う写真が象徴的です。
前半はリードと自由恋愛を主張するルイーズ,さらに劇作家のユージン・オニールの三角関係を中心に話が進みます。
私の興味は監督や俳優とは違うところにあることは,すでに書きました。
ただ,この映画でエマ・ゴールドマン役のモーリン・ステイプルトンが助演女優賞を獲得しました。しかし,ユージン・オニール役のジャック・ニコルソンの存在感が際立っているように思います。ジャック・ニコルソンは12回のアカデミー賞ノミネートと3回の受賞歴があります。
途中でインターミッションが入り,その後,リードがルイーズとともにロシアに渡り,ロシア十月革命を体験する場面になります。レーニンが登場し,トロツキーが演説し,リードもソヴィエトで発言する機会を与えられます。
アメリカに帰国後出版した「世界をゆるがした十日間」は,ベストセラーになりました。
リードは社会主義運動に本格的に身を投じ,アメリカ社会党から分離した左派がアメリカ共産党とアメリカ共産労働党を結成すると,アメリカ共産労働党のコミンテルン代表の承認を取り付けるため,再びモスクワに向かいます。
コミンテルン議長のジノヴィエフは,共産労働党のアメリカ代表を認めず,共産党と共産労働党の協力を求めます。
リードは帰国を試みますが果たせず,中東への宣伝活動に参加するのですが,リードを追ってきたルイーズとの再会は果たしたものの,チフスにかかって亡くなりました。33歳になる3日前でした。彼はモスクワのクレムリンの壁に葬られています。
ところで,ロシア革命には,1905年の第1次ロシア革命と1917年のロシア革命があります。第2次ロシア革命というのはありません。
また,ロシア革命は,ロシア二月革命とロシア十月革命の2段階です。
当時のロシアはユリウス暦を使っていたためグレゴリウス暦とは13日ずれていて,ユリウス暦2月23日に起こったロシア二月革命は,グレゴリウスでは三月革命となり,10月25日に起こったロシア十月革命は,十一月革命となります。
第1次ロシア革命は1905年,日露戦争中に起こりました。
首都ペテルブルクで平和誓願のデモ隊に軍が発砲した血の日曜日事件を契機として勃発しましたが,皇帝ニコライ2世が十月宣言で憲法制定と国会開設を約束すると沈静化しました。
しかし,1914年に第一次世界大戦が始まると再び革命運動が高まり,1917年にロシア革命が起こりました。
起こったのは首都ペテログラードにおいてです。ドイツ語読みのペテルブルクを,第一次世界大戦でドイツと戦うことになったため,ロシア風にペトログラードと変えたのです。
ロシア二月革命では,ニコライ2世が退位してロマノフ朝が倒れました。
その後,社会革命党右派のケレンスキーを中心とする臨時政府をレーニンらボリシェヴィキが倒したのが,リードたちが目撃したロシア十月革命です。
映画は,実際にリードと親交のあった人々のインタビュー映像を挟み込んでリアリティを出しています。彼らは1980年の映画製作時点では存命だった人々で,貴重な記録になっています。しかし,それぞれの人物の名前は示されていません。そのなかには高名な文学者のヘンリー・ミラーも含まれます。彼は1980年6月に亡くなっています。
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