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今回の映画は1970年の作品で,ずばり世界史そのもののタイトル「クロムウェル」です。
主演のリチャード・ハリスはアイルランド出身の俳優で「ハリー・ポッター」シリーズの1作目と2作目で魔法学校の校長役を演じています。また,「グラディエーター」ではマルクス・アウレリウス・アントニヌス役をやっています。
カトリックの多いアイルランド出身の俳優が,ピューリタンのクロムウェルを演ずるというのは興味深いですね。
イギリスでは,ピューリタン革命の100年以上前に宗教改革が行われました。
テューダー朝のイギリス王ヘンリ8世が離婚問題でカトリック教会から分離し,1534年に国王至上法を発布して,イギリス国王を首長とするイギリス国教会を設立したのです。
しかし,理由が離婚問題だけに,信仰内容はカトリックと変わりませんでした。
そこで,次のエドワード6世の時代に,やはり宗教改革で成立したカルヴァン派の教義をとり入れて一般祈禱書が制定されました。
でも,儀式はカトリック的なものを残していたので,イギリスのカルヴァン派はイギリス国教会をカトリック的な要素の残った不純なものとして,純化すべきだと考えたのです。そこで,pureからピューリタンと呼ばれました。
この映画でも,クロムウェルが教会でカトリック的な器物を見つけて激怒する場面が出てきます。
テューダー朝は,17世紀初頭にエリザベス1世が独身のままなくなり,断絶しました。
そこでスコットランド王ジェームズ6世が招かれて,イギリス王ジェームズ1世として即位し,ステュアート朝を開きました。しかし,彼はイギリスの状況をよく知らず,王権神授説を信奉して専制政治を行いました。
この映画でも出てきますが,王権神授説とは王の権力は神から与えられたもので,神聖なものであるという考えです。だから国民がとやかく言うべきではないという,国王にとって都合の良いものです。
彼の時代には,その専制政治に反発した人々を中心としたピルグリム・ファーザーズがメイフラワー号でアメリカに渡りました。
ジェームズ1世の子チャールズ1世も専制政治を行い,議会が1628年に議会の認めない課税や不当な逮捕の停止を求めた権利の請願を発表しました。
この時代は,まだ王は専制君主ですから,王に「お願い」をしたのです。王はいったん認めておきながら,翌年議会を解散して11年間議会を開きませんでした。
しかし,スコットランドで反乱が起こり,その戦費を捻出する増税を認めさせるために議会が開かれましたが,拒否したため3週間で解散されたため,短期議会と呼ばれました。
再び開かれた会議も王の要求を認めず,ついにピューリタン革命が起こりました。この議会は1653年にクロムウェルによって解散させられるまで13年間開かれていたので,長期議会といいます。
また,当時は,囲い込みすなわちエンクロージャーが行われており,その様子がこの映画に出てきます。
領主が,土地を垣根や柵で囲って農民を追い出したのです。
15世紀から17世紀の第1次囲い込みはこれで,非合法で毛織物産業が発展したための牧羊が目的でした。
これに対して18世紀から19世紀の第2次囲い込みは,議会の承認を受けた合法的なもので,農業生産の合理化のためでした。これで仕事を失った農民たちは産業革命の労働者となっていきます。
今回は,この映画の前史,ピューリタン革命の前史を中心にお話ししました。
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