黒船」(2) ハリス,ヒュースケン,斎藤きち,井上清直,徳川家定,徳川家茂,ジョン・ウェイン

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この映画が製作された時代を考えると,今風に言えばホワイトウォッシング,つまり日本人の役を白人の俳優が演じたり,日本をステレオタイプの変な描き方をしてるのではないかと思えますが,監督が「天地創造」や「白鯨」の巨匠ジョン・ヒューストンだけに意外とちゃんと撮っています。

日本の京都や奈良でロケを行って,日本人俳優を使い,日本人は日本語で話しています。監督として有名な衣笠貞之助など,日本人スタッフも多く協力しています。

通辞のヘンリー・ヒュースケンの日本語もほぼ正確です。ただし,ヒュースケンはオランダ人で,当時の日本ではオランダ語が外交の言語でしたから,最初はオランダ語で話しているはずです。

山村聡が演じている下田奉行田村左右衛門守が英語がペラペラだったするのは,架空の人物ですし仕方がないでしょう。

もちろん変なところはあり,江戸の寺が明らかに東大寺で,仁王像や大仏が出てきます。

また,黒田節を編曲したBGMが流れるのはご愛敬としても,芸者お吉が宴会で「叱られて」を歌うのはあり得ないでしょう。

まず芸者が宴会で歌う歌として変ですし,しかも「叱られて」はのちの1920年に雑誌で発表された童謡です。なお,タウンゼント・ハリスとヘンリーの前で歌う「とうりゃんせ」は江戸時代からのわらべうたです。

当時,実際に下田奉行としてハリスと対応したのは井上清直で,徳川家定への謁見を実現し,日米修好通商条約締結の全権となり,さらに外国奉行としてロシア・フランス・イギリスとも通商条約を締結しています。

ハリスは敬虔なクリスチャンで一生独身でした。

お吉は本当は斎藤きちという女性で,ハリスが体調を崩したさいに看護婦の派遣を要請したのですが,日本側は看護婦の意味が分からず,芸者のきちを派遣したようです。

しかし,ハリスはきちを気に入らなかったのか,すぐに送り返しています。その期間は,3日あるいは3か月と言われています。

もちろん,映画のように江戸まで同行したと言うことはありません。

その後,きちは芸者に戻ったのですが,外人に身を任せたとして差別を受け,幼なじみと所帯を持ちますがそれもうまくいかず,アルコール中毒となって最後は自殺するという不幸な女性でした。

1928年に十一谷義三郎が発表した小説『唐人お吉』で有名になり,1930年には溝口健二監督でサイレント映画になりました。

通辞ヘンリー・ヒュースケンは,1861年に日本で暗殺されています。その時彼は28歳でした。

この映画では老人として登場しますが,実際は青年だったのです。主役のジョン・ウェインを目立たせる配慮だったのでしょう。

ハリスに謁見した将軍は第13代徳川家定で,病弱で凡庸な将軍だったとされており,謁見の翌年35歳で死去しました。

この映画に出てくる将軍は,ハリスが持参したイスや望遠鏡に興味を示す少年のように描かれています。

これは家定の次の第14代徳川家茂を投影したのではないでしょうか。この家茂と結婚したのが有名な和宮です。

しかし,有能な将軍として期待されていた家茂も,20歳で夭折してしまいます。

なお,ジョン・ウェインは,1979年に72歳でなくなりました。その原因は,ウェインがチンギス・ハンを演じた「征服者」を1955年に撮ったとき,ネバダ核実験場の風下でロケをして被爆したためとする研究もあります。

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