「グレートウォール」(2) 饕餮(とうてつ),中国の古代文明,スタートレック

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饕餮(とうてつ)は,古代中国の怪物です。からの時代の青銅器には,饕餮文と呼ばれる奇怪な文様が刻まれていることがあります。

饕餮は体が牛または羊で人間の顔を持ち,何でも食べる貪欲な存在だったのですが,そのことから魔物もたべると考えられるようになり,魔除けのシンボルともなりました。

殷や周の時代には,王が神の意志を占って政治を行う神政政治でした。

殷後期の都の遺跡である殷墟から,たくさんの獣の骨や亀の甲羅が発掘され,最初は何か分からず,龍の骨として漢方薬に使われていたらしいですが,それらに刻まれていたのが漢字の先祖にあたる甲骨文字で,神の意志を占うために使われたものだということが分かったのです。

そこで,王の権威を示す儀式に使われる青銅器に,恐れられると同時に守護神でもある饕餮が刻まれたのでしょう。

また,以前はよく4大文明として,エジプト文明メソポタミア文明インダス文明黄河文明をあげていました。4大文明自体,当時もっとたくさんの古代文明が存在していたことが明らかになるにつれ,あまり言わなくなりました。

それはともかく,中国の古代文明は,黄河文明と呼ばれていました。黄河流域で繁栄していたから黄河文明で,前期は仰韶文化,後期が竜山文化と呼ばれます。

しかし,長江流域にも古代文明が存在したことがだんだん分かってきて,現在では教科書などは中国文明という表現を使い,それを黄河文明と長江文明に分けます。

長江文明には,仰韶文化と同時期の河姆渡遺跡が見つかり,竜山文化と同時期の良渚文化,そして殷と時期が重なる三星堆文化などがあります。

この三星堆文化では,やはり青銅器が発達したのですが,そのデザインは饕餮文以上に独特で, 眼が飛び出している奇怪な仮面が出土しています。

正確には眼ではなく瞳が飛び出しているのです。しかも巨大なもので,とても顔にはつけることができません。

おそらく,当時は誰でもわかる自明の意味があったのでしょう。でも今は誰にも分かりません。おそらく歴史上のさまざまな解釈は後世の人がまったく誤解しているものもあるでしょうし,今われわれにとって当たり前のことでも,何百年か何千年か経てば,まったく意味が分からなくなるのかもしれません。

この映画の饕餮は,女王の指令を受けて行動しているので,強力な磁石を近づけるとその指令が伝わらなくなり,おとなしく寝てしまうという設定になっています。

皆さんは,蜂や蟻を連想したかもしれませんが,私はアメリカのテレビシリーズのスタートレックを思い出しました。

いくつかシリーズがあるのですが,1980年代から90年代に放送され,映画化もされているネクストジェネレーションシリーズにボーグという宇宙生命体が出てきます。

やはりボーグ・クィーンと呼ばれる女王の指令ですべてのドローンと呼ばれる生命体がコントロールされており,個々のメンバーには個としての意識はないのです。そして異文化の知識や技術をどんどん吸収するために侵略をくり返す存在です。

もちろん,これにも元ネタらしきものはあるのですが,この映画の制作者たちが参考にしたのはたぶん間違いないでしょう。

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