「エクソダス 神と王」(4) 出エジプトとバビロン捕囚

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映画「十戎」で一番有名なのは,やはり紅海をモーセが二つに割って,海のなかにできた道をヘブライ人が渡る場面でしょう。しかし,当時の特撮技術では人々の体は二重写しで透けてみえました。

「エクソダス」では,モーゼが海を二つに割るのではなく,突然空が雲に覆われ,竜巻が起こって海が一方にに流れていき,浅瀬ができます。そこをヘブライ人が渡って行きます。やがて,巨大な高波がやっいてきて海は元通りとなり,エジプト人は飲み込まれてしまいます。さすがにリアルです。

しかし,いくら技術的に未熟でも「十戎」の場面の方が印象に残りますね。

十の災いやこの海を渡る場面のリアルさに比べて,「エクソダス」は全体に人物の描写がやや薄っぺらで,ラムセスとモーセ以外の人物に存在感がありません。

ヘブライ人の長老ヌンは映画「ガンジー」でアカデミー主演男優賞を獲得した名優ベン・キングズレーですし,ラムセスの母は「エイリアン」シリーズのシガ-ニー・ウィーバーです。キングズレーはさすがに存在感を示していますが,ウィーバーはエジプト風の濃い化粧のせいかよく分かりません。

モーセのクリスチャン・ベールも,若い時代のモーセのときには現代人のエリート・ビジネスマンようにみえてしまう瞬間があります。

ところで,出エジプトのヘブライ人の数は,この映画では40万人となっています。聖書には,男だけで60万3550人とされており,総勢200万人ほどになると考えられています。

あまりに非現実的なので,5000人から6000人ほどではなかったかという説もありますが,ネットで調べると,聖書の数が正しいとするサイトがいくつかありました。信仰の立場からは聖書の記述を疑うことはできないのです。

ヘブライ人は,こののち,前1000年頃に約束の地カナーンの地で王国を建てますが,ダビデソロモンの繁栄のあと,北のイスラエル王国と南のユダ王国に分裂し,イスラエル王国はアッシリアに,ユダ王国が新バビロニアに滅ぼされました。

ユダ王国の住民の多くは,新バビロニアに滅ぼされたとき,バビロンに拉致されました。この前6世紀の約50年間を,バビロン捕囚といいます。

その後,新バビロニアがアケメネス朝キュロス2世に滅ぼされると,ヘブライ人は帰国を許され,帰国したヘブライ人はユダヤ教を成立させました。

この出エジプトやバビロン捕囚などの民族的苦難を背景として,ユダヤ教は選民思想をもつ民族宗教となったのです。

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