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映画が始まるとすぐにヒッタイトとのカデシュの戦いが起こります。
前13世紀前半,前1286年または前1275年に,エジプトのラムセス2世とヒッタイトの王ムワタリがシリアの支配をめぐって起こした戦いです。この映画では,ラムセスの父セティ1世の時代となっています。
ヒッタイトは未開の民族のように描かれていますが,ヒッタイトは古代オリエント世界で初めて鉄器を使用し,馬と戦車で周辺に勢力を拡大した強国でした。
勝敗は決することなく,ヒッタイト・エジプトともに自らが勝利したと記録しています。ラムセス2世はアブ・シンベル神殿などの壁にヒエログリフで戦勝記録を彫らせ,ヒッタイトは楔形文字で粘土板に記録しています。
そして,このとき世界最初の平和条約が結ばれたとされ,ヒッタイトの粘土板のレプリカがニューヨークの国連本部に飾られています。
さて,ラムセスとモーセが兄弟のように育ったとは,聖書にはありません。おそらく,セシル・B・デミルの「十戎」の設定を採用したのでしょう。
ちなみに,聖書は旧約聖書と新約聖書があり,「旧約」は古い契約で神とユダヤ人の契約,「新約」は新しい契約で神と人類の契約をそれぞれ意味します。決して,同じ聖書の「旧訳」と「新訳」ではありません。
過去に同志社大学の正誤判定問題でこの「約」の字が「訳」となっていて誤りという選択肢がありました。
キリスト教では,旧約聖書と新約聖書の両方が聖書ですが,ユダヤ教徒にとって聖書は旧約聖書だけです。したがってユダヤ教では単に聖書です。
しかし,入試問題で,「ユダヤ教の聖典はなにか」と聞かれたら,やはり「旧約聖書」と書いた方がいいかもしれません。教科書は旧約聖書と書いています。
ラムセス2世が,ヘブライ人がエジプトを出て行くことを認めないため,神は十の災いをもたらします。
これは聖書にあり,映画でもそのまま登場します。水が血の色に染まり,カエルが異常繁殖し,ブヨが異常発生し,アブも発生し,病が蔓延し,腫れ物ができます。雹が降り,イナゴが大量発生し,暗闇が襲い,病でエジプト人の長子が死んでいきます。それでも,この映画では一種の自然現象ともとれるように描かれています。
モーセが山で神の使いである少年と出会ったのも,山崩れで頭を打ったため幻想を見るようになったともとれるようになっています。
映画「十戎」では神が雷で石に刻んだ十戎の石版は,この映画では神の使いの少年と相談しながら,モーセ自身がノミで彫っているのです。聖書では,神から授けられたものとはありますが,どのように作られたかは書いてありません。
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